前回の記事では、入管法の役割やその歴史を見た。そこで明らかになったのは以下3つだ。
- 入管法の役割は、人々の公正な出入国在留管理・外国人の退去強制・難民認定の3つ。
- 同法は、時代と共に難民や外国人労働者受け入れ制度を整えた。
- しかし同法の歴史は、外国人を日本社会に不安をもたらす存在とみなし、その存在を常に否定し続けた歴史でもあった。
ではその延長線上にある現在、入管法や入管施設、技能実習制度などは、どこが問題視されているのだろうか?また、問題の解決には何が必要なのだろうか?
入管法や入管施設の問題とはなにか?
入管法や入管施設の問題を端的に表すと、入国管理における外国人の人権や尊厳の侵害だ。以下、順に確認しよう。
手続き的権利の問題
まず初めに、外国人の権利にまつわる問題だ。
入管法をめぐる問題の1つは、外国人の収容が司法審査を経ないで実施されることにある。なぜなら、司法審査のない個人の収容は、国際人権条約(自由権規約第9条第4項)に違反するからだ。同項は、
逮捕又は抑留によって自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続をとる権利を有する
と定める。つまり収容される外国人は、その収容が合法かどうかをめぐって裁判所に審査を要求することが国際的に人権の一つとして認められている。そして、日本も同規約に批准している。
しかし入管法は、収容された外国人が収容の是非をめぐって裁判所で手続きをとる権利を保障していない。この手続き的権利の不在は入管法制定当初から指摘されており、国際法学者の大沼保昭も「個人の権利の手続的保障の観念を育む機会をついに一度としてもたぬまま」入管法制が形成されていったとしている。