12月19日・20日、Washington Post 紙のデイビッド・イグネイシャス氏は、アメリカのデータ解析企業Palantir Technologies(以下、Palantir)がどのようにウクライナ軍のロシア軍への反撃を支援しているのかについてレポートした。
記事では、Palatir社が導入したシステムが、北大西洋条約機構(NATO)による支援を受けながら、ロシア軍の位置情報などを正確にウクライナ軍に提供し、砲撃などの作戦実行を容易にしている様子を詳細に報じている。
Palantirはアメリカを始めとする西側諸国の軍や政府機関と機密性の高い事業を展開しているため、その内容については謎が多い。同社のサービスがウクライナにおいてどのように使用されているのか、詳細なレポートが行われるのは初めてだ。
本誌では、Palantirがどのような経緯で設立され、その背後にはどのような思想があったのかを特集で詳しく解説している。
本記事では、Palantirがどのような会社なのか振り返った上で、戦場におけるAIの活用が、今後の安全保障や戦争のあり方にどのような影響を及ぼすのかを検討していく。
Palantir、どのような企業か?
Palantir は、分散したデータを統合・分析して関係性や意味を可視化し、意思決定を支援するソフトウェアを提供している。2004年に PayPal 創業者で投資家のピーター・ティール氏と、ドイツで哲学の博士号を取得したアレックス・カープ氏らが創業した。
2001年9月11日の同時多発テロを受けて国家安全保障に特化した形でサービスを開始した。アメリカ中央情報局(CIA)が最初の顧客で、In-Q-TelというVCを通じて資金提供まで受けており、2008年まで唯一の顧客であった。その後治安当局や国防機関に広く Palantir の技術が導入されていき、テロに関連する情報を判別したり、爆破装置から兵士を守ったりするのに役立てられてきた。2011年には、アルカイダのオサマ・ビンラディンの潜伏先を突き止めた際にも Palantir の技術が活用されたとされる。
当初は省庁や治安当局など公共セクターが顧客だったが、民間にもビジネスを広げている。2010年にはニューヨーク警察の紹介を経てJPモルガンが初めての商業顧客となった。その後、航空宇宙機器開発のエアバスと関係を深めるなど、ヨーロッパを中心に顧客を広げていき、多くの民間顧客を獲得するようになった。現在50以上の分野・業種で200以上の顧客があるとされる。
2020年に上場
2020年にニューヨーク証券取引所に上場。上場当時の企業価値は200億ドルとされ、上場後も売上高を伸ばし、2022年7月~9月期の売上高は4.78億ドルで、前年同期比で21.86%増となった。しかし、創業後初めての黒字化とはならず株価が下落、現在の時価総額は約133億ドルとなっている(2022年12月30日現在)。