⏩ 進む組織的人身売買、年間約140億円に及ぶ経済規模に
⏩ 脱北女性の60%以上が売春、強制結婚、サイバーセックスのターゲットに
⏩ それでも増える脱北女性、コロナも状況悪化に影響
2023年4月11日、国際人権連盟(FIDH)は、北朝鮮人権データベースセンター(NKDB)と共同で、国連の女子差別撤廃委員会(CEDAW)第85回セッションに向けて報告書を提出した。同報告書は、中国で北朝鮮女性が直面する状況に焦点を当て、法的地位や保護の欠如、人身売買や強制結婚の問題を強調するものだ。
中国の裏社会では、ブローカーや売春業者、犯罪組織などによる、北朝鮮女性の人身売買の産業化が進んでおり、2014年には年間約140億円に及ぶ経済規模に達したと推定されている。特に、中朝国境の吉林省、遼寧省、黒竜江省ならびにその近隣の内モンゴル自治区などには脱北者が多く、北朝鮮女性の人身売買が横行している。
Border between China and North Korea(Google Map)
中朝間における人身売買は、2019年にもBBCやCNNなどによって取り上げられており、世界的な注目を集めているトピックだ。
中朝間における人身売買とは一体何で、なぜ深刻化しているのだろうか?
北朝鮮人女性の人身売買の実態
北朝鮮から中国へ渡る脱北者の統計は公表されていない。しかし、韓国へ入国した脱北者に関しては、2002年からコロナ禍前まで、毎年1,000人を超える脱北者が報告されていた。
脱北者においては特に女性の割合が高く、累計で見ても約72%が女性だ。2015年から2018年の期間では、そのような脱北女性の60%以上、主として12〜29歳の女性が性売買のターゲットとなったという。
まず、中国と北朝鮮の間で起こる人身売買の仕組みを見ていこう。