⏩ 4月に入って互いに直接攻撃を繰り返す
⏩ 1979年のイラン革命以来、影の戦争で対立
⏩ エスカレーションを招いた双方の「誤算」、パレスチナへの影響とは?
2024年4月19日(現地時間)、米・ABC News は、イスラエルがイランへの報復攻撃としてミサイルを発射したとする、アメリカ政府高官の話を報じた。イスラエルの The Jerusalem Post 紙は、同国政府関係者による「目には目を。歯には歯を」という言葉を伝えている。
一方のイラン側は、国営メディアがイラン北部・イスファハーン州で爆発音が聞こえたとしている。同国の当局者は CNN に対し、防空部隊がドローン3機を迎撃したが、ミサイル攻撃の報告はなかったと述べた。
その後、アメリカ政府当局者は ABC News に対し、イスラエルのミサイルがイランの敷地に着弾したことを認めている。
イスラエルとイラン周辺図(MapChart, CC BY-SA 4.0)
中東の緊張感が高まったことを受けて市場にも不安が広がった。19日には米国の原油指標である WTI 先物が、一時1バレル86ドル台と前日比 4% 以上急騰したほか、日経平均株価は約1,300円下落した。
ただ、4月22日時点で、イラン側がさらなる報復に出る可能性は低いと見られており、事態はトーンダウンしたように見える。これを受けて、市場でもひとまず安堵感が広がった。
ただ、今回の応酬において、イラン・イスラエルの双方に「誤算」があり、思わぬエスカレーションを招いたとも示唆されている(太字は引用者による、以下同様)。
なぜ、両国は激しく対立してきたのだろうか。そして、今回の応酬は何を示唆しており、終わりを見せないイスラエルとパレスチナの対立にどのような影響を与えるのだろうか。
何が起きたのか
一連の応酬の直接的な引き金は、4月1日、イスラエルが在シリアのイラン領事部を空爆し、イランの将官複数名が死亡した事件だ。この攻撃で破壊された領事部は、イラン大使館の隣の建物に入っており、大使館自体に被害は無かったと見られている。
イスラエル軍の報道官は CNN に対し、「ここは大使館でも領事館でもない。ダマスカスの民間施設を装ったコッズ部隊(引用者註:イラン革命防衛軍の精鋭部隊)の軍事施設だ」と述べた。こうした標的の区分が持つ意味については、後述する。
空爆された在シリアのイラン領事部。被害がないように見える中央の建物が大使館(Rajanews, CC BY-SA 4.0)