⏩ 19世紀後半には、競馬で写真判定が開始。オリンピックでは1912年から導入
⏩ VAR やホークアイ人間より精度高く判定、VAR は99.3%の精度
⏩ テクノロジー導入で、人間の誤審に変化も?
パリオリンピックでは、大会の存在や開会式のパフォーマンスについて、様々な議論が交わされているが、実際の競技において注目されている議論の1つが、”誤審” をめぐる問題だ。
たとえば、柔道男子60kg級の永山竜樹は、準々決勝で意識を失い一本負けの判定を受けた。主審が直前に「待て」のコールをしていたものの、相手のフランシスコ・ガルリゴスは寝技を続けていた。
この他にも、柔道女子48kg級準決勝の角田夏実対タラ・バブルファス戦における反則裁定、柔道男子90kg級決勝の村尾三四郎対ラシャ・ベカウリ戦におけるポイントの有無、バスケットボール男子の日本対フランス戦におけるファウル判定など、”疑惑” と囁かれる判定は少なくない。
こうした事態を受けた際に取り沙汰されている議論が、AI を含むテクノロジーによる審判制度の改善・形成だ。広く知られているように、サッカーやテニス、バレーボールなどでは、すでにテクノロジーを用いた判定の補助がおこなわれており、「人間の審判は限界」と指摘する声も少なくない。
野球においては、ボストン大学のジェームズ・E・フリーマン講師らが、11シーズン(2008年から2018年)にわたる約400万球を調査したところ、MLB(Major League Baseball)の球審は 12% 以上の確率で判定を間違えていた(*1)。
では、これまでテクノロジーは、どのくらい誤審を減らしてきたのだろうか。そして、テクノロジーと審判の融合は今後どこに向かうのだろうか。
(*1)同研究によれば、2018年シーズンにおいて、MLB の球審がボールとストライクを誤って判断した回数は3万4,246回だった。平均して1試合あたり14回、1イニングあたり1.6回の計算だ。同シーズンは55試合(全試合数の2.2%)が誤審で終了している。特に、2ストライク時に誤審をする確率が跳ね上がり、29% の確率で発生する。これは、1ストライクまたはノーストライクのときの確率のほぼ2倍だった。また、高い確率で誤審をおこなったのは、若くて経験の浅い審判員ではなく、年配のベテラン審判員であることも判明している。