A MacBook with lines of code on its screen on a busy desk(Christopher Gower, Unsplash) , Illustration by The HEADLINE

なぜコンピューターチップが世界的に不足しているのか

公開日 2021年03月31日 15:11,

更新日 2023年09月20日 11:47,

有料記事 / テクノロジー

コロナ禍を経て、自動車や在宅時の娯楽となるゲーム機やスマートフォンなどの需要が増加した。これに伴い、コンピューターチップの需要が世界的に高まることとなったアメリカの業界団体である半導体産業協会(SIA)は、2021年1月の世界のコンピューターチップの売上高は400億ドルと、前年同月比で13.2%も増加したと発表した。

自動車であれば、エンジン、ブルートゥース機能、シートシステム、衝突および死角検出、送信、WiFi、およびビデオディスプレイシステムにコンピューターチップが使われており、また自動運転に関わるさまざまな制御にもチップは欠かせない。また、ゲーム機やスマートフォンのようなハイテクガジェットも、チップの存在なしにはありえない。

しかし、こうした需要の高まりに対し、コンピューターチップは世界的に不足している。そして、高まる需要があるにもかかわらず、サプライヤーはチップ製造に苦戦を強いられている

なぜコンピューターチップは世界的に不足しており、生産量が増加しないのだろうか。また、チップ不足が続くとどのような問題が起こりうるのだろうか。

なぜ不足しているのか

世界的なコンピューターチップ不足の原因は、コロナ禍における消費者ニーズの変化と企業側の在庫管理体制にあるとされている

パンデミックによって、人々が外出を控えるようになった結果、コンピューターチップの利用数の多い自動車の販売が大きく落ち込んだ。自動車メーカー各社は製造をスリム化し、部品注文を減らすことでこの状況に対応することとなったため、コンピューターチップの発注も減少した。

他方で、リモートワークのためのラップトップなどのホームオフィス機器や、娯楽用のゲーム機やスマートフォン、タブレット端末、健康管理のためのヘルステックなどで需要が急増した。こうした消費者ニーズが生まれたため、半導体製造会社は自動車向けの供給を減らし、電子機器メーカーへの供給を優先することとなった

だが、パンデミックを経て自動車販売は回復しつつある。こうした中、製造のスリム化によって自動車メーカーはほとんど部品の在庫を抱えておらず、コンピューターチップの確保に動かなくてはならなくなった。また、急な需要増に対応していた電子機器メーカーも、余剰在庫を抱えていたわけではない。

加えて、マレーシアやフィリピン、シンガポールといったアジア圏でのコロナ対応を受け、コンピューターチップ製造のサプライチェーンの混乱が起こった。後述するように、アジア圏はコンピューターチップ製造の一大拠点であるため、影響は世界的である。

こうしたコロナ禍を受けての需給バランスの変化とサプライチェーンの混乱が、各業界・各企業間でのコンピューターチップの争奪戦を招いた結果、世界的なチップ不足となったのだ。

生産量を増加できない理由

では、コンピューターチップの製造企業側は、世界的なニーズ増加があるにもかかわらず、なぜ増産体制に入らないのだろうか。

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✍🏻 著者
法政大学ほか非常勤講師
早稲田大学文学部卒業後、一橋大学大学院修士課程にて修士号、同大学院博士後期課程で博士号(社会学)を取得。専門は社会調査・ジェンダー研究。
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