今年3月、Facebookがクリエイター向けのコンテンツ・プラットフォームを計画していることが報じられた。現在、その機能に名前はないものの、少数のライターやジャーナリストに向けてテストされている。
Facebookは、今年1月にニュースレター機能を開発中であることも報じられており、いずれも同社のジャーナリスト支援プロジェクト「Facebook Journalism Project」の一環に位置づけられる予定だ。
FacebookだけでなくMediumやLinkedin、Twitterなど大手サービスは、ライターやジャーナリスト、クリエイターによる有料コンテンツを支援する機能やサービスに続々と力を入れている。背景には、クリエイターエコノミーと呼ばれる動きがある。
何が起きているのだろうか?
サブスクを強化するFacebook
米メディアAxiosによれば、開発中のコンテンツ・プラットフォームはFacebookページと連携される予定だ。テキストだけでなく写真や動画、ライブ配信など様々な形のコンテンツを公開することが可能となり、これらのコンテンツはサブスクリプション(有料課金)によって収益化できるモデルとなる。またFacebookグループを通じて、読者とのエンゲージメントを強化する機能も予定されている。
実はFacebookがサブスクリプション機能を導入するのは初めてではない。2018年にもサブスクリプションの導入テストをおこない、Facebook for Creatorsというサイトも公開されている。
これらは子育てや料理、ゲームなどのコミュニティ(Facebookグループ)への課金であり、有料でファンとコミュニケーションが取れるSNSのPatreonに対抗したものと見られていた。今回の機能は、グループではなくクリエイター個人のコンテンツに対する課金となるため厳密には異なる機能だが、数年前からFacebookがサブスクリプションに目を向けていたことは間違いない。
ジャーナリズムへの支援
今回の機能はエンタメやライフスタイルの分野ではなく、ニッチなカテゴリーや特出した専門分野、地元のニュースなどについて、優れたコンテンツを作り出すジャーナリストやクリエイターへの支援という色合いが強い。
報道機関から広告費を奪ってコンテンツに「タダ乗り」しているという批判や、フェイクニュースを蔓延させたという非難を受けているFacebookは、2016年頃からジャーナリズムへの支援を強化している。前述した「Facebook Journalism Project」は2017年に立ち上げられ、これまでに約6億ドル、向こう3年間で10億ドルを拠出する予定となっている。
最近では新型コロナウイルスの影響で広告収入が激減したローカル・メディアへの支援や、「Facebook News」機能を通じた報道機関への収益還元などもおこなっており、ジャーナリズムへの友好的な姿勢をアピールしている。ただし、豪州では法案を巡ってFacebook上でのニュースを排除するなど(後に撤回)強硬姿勢も辞さず、Facebookが本当にジャーナリズムの味方であるかは懐疑的な声も強い。
このようにFacebookとジャーナリズムは、一定の距離感を保ってきた。今回の新機能も単なる「Facebookによるジャーナリズムへの支援」という文脈ではなく、クリエイターエコノミーの盛り上がりという背景がある。