Scott Morrison(Eesan1969, CC BY-SA 4.0), Xi Jinping(Kantei, CC BY 4.0), Illustration by The HEADLINE

新たな安全保障の枠組みAUKUSとは何か?

公開日 2021年09月20日 21:23,

更新日 2023年09月13日 15:29,

有料記事 / 政治 / 国際

今月15日、オーストラリア(AU)・英国(UK)・米国(US)の3ヶ国が、新たな安全保障の枠組みとなるAUKUS(オーカス)を発表した。これにより米国から技術的支援を受けたオーストラリア(豪州)は初めて原子力潜水艦を製造すると共に、人工知能(AI)や量子技術、サイバーセキュリティーなどでも協力関係が結ばれていく予定だ。

AUKUSは、中国を念頭に置いた軍事パートナーシップであることから同国は強く反発している一方、オーストラリアとの原子力潜水艦の契約に関連して、フランスも不快感を示している。

一体AUKUSとは何であり、なぜ各国はこのような反応をしているのだろうか?米国やオーストラリア、中国、そして日本にとってどのような意味があるのだろうか?

AUKUSとは

前述したように、AUKUSとは米・英・豪の3カ国による軍事パートナーシップだ。中国の台頭が、安全保障上の脅威を増大させる中、幅広い技術開発での協力を目的としている。

このパートナーシップによってオーストラリアは、米国・英国・フランス・中国・インド・ロシアに続いて、原子力潜水艦を製造する7番目の国となる。原子力潜水艦は動力として原子炉を用いる潜水艦であり、オーストラリアは非核兵器保有国でありながら原子力潜水艦を保有することになる。

また上記6カ国のうち、インド以外の5カ国(核兵器5カ国、P5)は核拡散防止条約(NPT)によって核保有が認められており、オーストラリアはNPT参加国でありながら、原子力潜水艦を保有することにもなる。

  P5 インド オーストラリア
核兵器 保有 保有 非保有
NPT 加盟 未加盟 加盟
原子力潜水艦 保有 保有 AUKUSにより保有予定


一般的にP5以外が原子力潜水艦を保有することは、国際原子力機関(IAEA)による核技術などへの監視を難しくする問題があるものの、今回3カ国はIAEAとの事前合意をおこない、オーストラリアへの米国からの技術供与が認められている。またIAEAは、今回のパートナーシップにあわせて「核拡散防止の体制強化とオーストラリアによる模範的な姿勢」を維持するため、数ヶ月間にわたって3カ国と協力していくことも発表している。

つまり、P5にインドを加えた6カ国にオーストラリアが加わることは、国際社会の安全保障にとっても稀有な出来事だと言える。また原子力潜水艦の保有によって、オーストラリアの海軍能力は飛躍的に向上するとも指摘されており、太平洋地域における軍事バランスは新たに書き換えられ始めた。

中国の反発

もちろん中国は、AUKUSに強く反発している。後述するように、オーストラリアと中国の関係(豪中関係)は近年悪化しており、オーストラリアと米英の軍事パートナーシップが、インド太平洋地域における対中政策の意味を持っていることは明白だからだ。

共産党系の英字新聞 Global Times 紙は、以下のように米国を批判する。

ワシントンは常に自国の利益を最優先し、中国とのゼロサムゲームに全力を尽くし、他国にも中国とのゼロサム関係を最大化するよう要求してきた。(略)米国がグローバル化した時代の法則に従わないまま、頑なに歴史を引き戻して、冷戦時代の対決を始めようとするならば、その代償を払う運命にあるだろう。

また同紙はオーストラリアについても「米国の犬」と罵り、以下のように述べる

中国とオーストラリアの間には、かつて遺恨は存在しなかった。両国は地理的に離れており、地政学的な対立もなかった。しかし、米中による戦略ゲームにおいて一方的に米国寄りの政策を取ったことで、オーストラリアは中国の敵対国になってしまった。

フランスの不快感

一方、AUKUSに対して不快感を示している西側諸国もある。それは、フランスだ。

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✍🏻 著者
編集長 / 早稲田大学招聘講師
1989年東京都生まれ。2015年、起業した会社を東証一部上場企業に売却後、2020年に本誌立ち上げ。早稲田大学政治学研究科 修士課程修了(政治学)。日テレ系『DayDay.』火曜日コメンテーターの他、『スッキリ』(月曜日)、Abema TV『ABEMAヒルズ』、現代ビジネス、TBS系『サンデー・ジャポン』などでもニュース解説。関心領域は、メディアや政治思想、近代東アジアなど。
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