Netflixの韓国ドラマ『イカゲーム(Squid Game)』が、大ヒットしている。
Bloombergによれば、全世界で約1億4,200万世帯が視聴し、製作費2,140万ドル(約24億円)に対して、8億9,110万ドル(約1017億円)の価値を生み出した作品となり、開始28日間で8,200万人が視聴した「ブリジャートン家」の同サービスにおける記録を塗り替えた。
一方、日本では『カイジ』や『今際の国のアリス』、『神さまの言うとおり』など国内のデスゲーム(登場人物が死を伴うゲームに参加する作品ジャンル)作品との類似を指摘する声などもあり、懐疑的な声も聞かれる。
なぜ『イカゲーム』は熱狂的な人気を集めているのだろうか?
イカゲームとは
イカゲームは、イ・ジョンジェ演じる中年男性の主人公ソン・ギフンらが、456億ウォン(約45億円)もの賞金を獲得できるゲームに参加する物語だ。456人の参加者は、「だるまさんが転んだ」や「綱引き」など子どもにお馴染みの6つのゲームに挑み、脱落者は次々と殺害されていく。
作品の大ヒットにより、イ・ジョンジェや出演者のパク・ヘス、チョン・ホヨン、ウィ・ハジュンらは一躍世界的スターとなり、TWICEメンバーがコスプレを披露したり、日本の俳優の賀来賢人や本田翼らも作品のファンであることを明かすなど、社会現象となっている。
Netflixの韓国ドラマといえば、『愛の不時着』や『梨泰院クラス』、『ヴィンチェンツォ』など近年のヒットの連発が記憶に新しいが、本作はNetflix社の2021年7〜9月期決算における純利益を前年同期比83%増の14億4907万ドルに引き上げる原動力となるなど、桁違いの大ヒットとなっている。
作中に登場した電話番号が実在していたため、いたずら電話が殺到したり、TikTokのハッシュタグ「#SquidGame」が228億回以上も視聴されるなど、SNS上でも抜群の話題性を誇っている。
では一体、なぜこれほどまでの人気作品となったのだろうか?人気の理由を推測する記事は数多く出ているが、韓国やカルチャーの専門家たちによる分析を中心に見ていこう。
『イカゲーム』の成功は、作品を取り巻く外的要因と作品固有の内的要因の大きく2つから説明される。それぞれについて、順番に見ていこう。
外的要因
『イカゲーム』が優れた作品であることは間違いないが、それを支えるのが複数の外的要因だ。
(*)以下の記述では、一部ネタバレが含まれます。
非英語作品の人気の高まり
『イカゲーム』が他の韓国作品と異なるのは、英語圏における人気だ。
9月17日に公開された本作は、19日に初めて米国のトップ10にランクイン(8位)して、翌日には2位、そして翌21日には1位を獲得している。『愛の不時着』も英語圏で数多くのメディアに取り上げられたものの、それは北朝鮮と韓国の政治的背景に紐づけて語られることが大半であり、商業的成功として日本やインドネシア、フィリピン、タイなどアジア圏に限られていた。
非英語作品の米国における人気の高まりは、Netflixにおける最近のトレンドだ。同社によれば、米国での非英語作品の視聴回数は2019年から71%増加しており、米国に暮らす視聴者の97%は、過去1年間に1度は非英語作品を視聴している。実際、フランスの『ルパン』やスペインの『ペーパー・ハウス』などは、非英語作品でありながら世界中で人気シリーズとなった。