今月7日、資金繰りに苦慮している中国・不動産大手の恒大集団が、一部の公募(オフショア)債の利払いをおこなっていないことが報じられた。利払い期限は日本時間7日午後で、支払額は8,250万ドル(約93億円)だったが、デフォルト(債務不履行)になったと見られている。
同社は、今回の利払いが出来なければクロス・デフォルト(1つの債務でデフォルトが生じた時、他の全ての債務についてもデフォルトとみなされること)となり、中国最大のデフォルトに陥る可能性がある。
重要な理由
今回のデフォルト危機が注目を集めている理由は、中国や世界の不動産および金融市場に影響を与える可能性があったからだ。
今年9月頃から同社の債務危機が報じられるにつれて、中国経済の下振れリスクや連鎖的な金融市場への打撃が懸念されはじめた。中国では過去数年間、不動産バブルが膨らんでおり、習近平国家主席が「住宅は投機のためではなく、居住のためにある」と発言するなど、沈静化に向けた政策が進められていた。こうした中で、中国最大の不動産企業にデフォルト危機が持ち上がったことから、その影響の広がりが懸念されていた。
しかし、6日には上場来最安値を更新した同社株価だったが、7日の取引序盤では7%の値上がりとなるなど、株式市場全体への波及は避けられた。前日に「リスク管理委員会」が設置され、広東省政府や中国人民銀行(中央銀行)などの介入によって債務再編が目指されることが、好材料になった形だ。
背景
中国では、2020年夏頃から当局による不動産関連の規制強化が進み、恒大集団をはじめとした不動産大手の経営悪化が目立ってきた。価格規制に加えて、当局から不動産企業に対する債務削減が要求されたことで、大手各社の資金繰りは悪化。9月には、新築住宅価格が6年ぶりに下落へと転じた。
ただし最近になって、中国政府は再び金融市場と不動産市場に対する姿勢を修正しつつある。同国はコロナ後の経済成長が鈍化しており、不動産市場の軟調や電力危機などが背景にあると指摘されている。そのため今月3日には金融緩和が報じられ、1兆2000億人民元(約21兆円)の資金が市場に供給される見込みだ。
こうした政策的な動きが、苦境に落った不動産業界にとって好材料になると見られており、恒大集団のデフォルト危機に伴う悲観的な見方が拡大しなかった要因の1つとみられる。