奈良県内の病院で治療を受けていた安倍元首相の死亡が確認された。元首相は今日午前11時半ごろ、奈良市内で演説中に銃撃され、心肺停止状態が続いていた。
事件の概要
安倍元首相は、今日午前11時20分頃から奈良市・近鉄大和西大寺駅前の路上で、自民党公認候補の応援演説に訪れていた。自民党候補者の紹介をはじめて間もなく、後ろから銃撃され、その場に倒れて、救急車とドクターヘリで奈良県立医科大学付属病院(橿原市)に搬送された。
消防によれば、安倍元首相は首の右側に傷・出血があり、左胸に皮下出血があった。
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警察は、すぐに奈良市在住の山上徹也容疑者(41歳)を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕。山上容疑者は、2002年に任期付きの自衛官として入隊、2005年に退職していた。
与野党関係者、事件を強く非難
事件後、与野党関係者はいずれも事件を強く非難。
松野官房長官は「今回のような蛮行は許されるものではなく、断固非難する」とした上で、全閣僚に対して首相官邸に緊急に戻るよう指示した。
立憲民主党・泉代表は「この卑劣で許されない凶行を断固非難し、安倍元総理のご無事をお祈り申し上げます」と発言。また、国民民主党・玉木代表は「あってはならない蛮行だ。安倍氏の速やかな回復を祈る。許しがたい卑劣な行為で、強い怒りを感じる」と述べた。
安倍元首相とは
安倍首相は、1954年(昭和29年)年9月21日生まれの67歳。祖父に岸信介首相、大叔父に佐藤栄作首相を持つ政治家一族出身で、成蹊大学法学部政治学科を卒業後、神戸製鋼所に入社してから、父である安倍晋太郎・元内閣官房長官の秘書官を務めた。
1991年、父・晋太郎の急死にともなって、1993年の第40回衆議院議員総選挙で初当選。内閣官房副長官や自民党幹事長などを歴任後、2005年の第3次小泉改造内閣で内閣官房長官として初入閣を果たした。
戦後最年少・戦後生まれ初の首相
2006年、戦後最年少・戦後生まれ初の首相となった。しかし翌2007年には自身の体調不良などから約1年で首相を辞任。
その後、2012年の自民党総裁選で再び勝利したことで、再度首相に就任。第2次政権では約7年8カ月となる長期政権を築くとともに、大胆な金融緩和を主軸とした経済政策・アベノミクスや消費税の引き上げ、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障法制や特定秘密保護法、共謀罪などの成立を推進した。
一方で政権末期には、桜を見る会や森友・家計学園問題などで批判を集め、長期政権の弊害も指摘されていた。
首相経験者の襲撃
戦後、首相経験者が襲撃により死亡した例はない。
戦前には、1909年(明治42年)に伊藤博文元首相がハルビン駅で銃撃され、死亡している。また原敬首相は1921年に東京駅で刺殺されている他、1930年には同じく東京駅で浜口雄幸首相が銃撃され、翌31年に死亡した。
32年の5・15事件では犬養毅首相が、2・26事件では首相経験者であった高橋是清大蔵大臣が殺害されている。