米連邦通信委員会(FCC)のコミッショナー、ブレンダン・カー氏は6月24日(現地時間)、米・Appleと米・GoogleのCEOに対して、アプリストアからTikTokアプリを削除するよう要請した。
カー氏は同月19日のBuzzFeedの報道に言及し、TikTokを利用する米国ユーザーのデータが、中国から繰り返しアクセスされていたことを批判した。さらに、AppleとGoogleが運営するアプリストアのポリシー違反だと主張して、両ストアから削除すべきだとした。
TikTokが米国政府や企業による規制に関する議論の対象となるのは、今回が初めてではない。トランプ前政権とバイデン現政権を通して、TikTokへの規制の可能性は繰り返し議論されてきた。しかし、米国からの追放という重い制裁は免れており、同国ユーザーは現在も同アプリをダウンロードできる。
果たして今回の要請を受けて、TikTokはアプリストアから追放されるのだろうか?TikTokと米国の対立の歴史や、中国側の反応などから見ていく。
TikTokとは
TikTokは、中国に拠点を置くByteDanceが運営する、ショートムービーに特化した世界最大級のソーシャルネットワーキングサービスだ。2016年に抖音(ドウイン)として中国国内でローンチされ、2018年に中国のソーシャルメディアサービスMusical.lyを買収・合併することで、グローバル展開を本格化した。
ユーザーは、15秒や60秒といった短い動画にBGMを組み合わせて編集し、TikTok上で公開することができる。コンテンツフィードは人工知能によって各ユーザーに対して高度にパーソナライズされており、それぞれに関連性の高い動画コンテンツが「おすすめ」として表示される。
10億人を超えるユーザー数
2018年のグローバル展開以降、TikTokのユーザー数は急速な成長を遂げてきた。
2021年9月時点の月間アクティブユーザー数(MAU)は、グローバルで10億人にまで到達しており、前年同時期比で、約45%増と大幅成長している。
地域別ではアジア圏ユーザーがおよそ3億人と最も多く、北米でもおよそ1億3000万人ほどに達していると見られている。日本国内では、16歳以上のMAUが2021年8月時点で約1700万まで増加している。
安全性への懸念
若年層を中心に圧倒的な支持を集めてきたTikTokだが、サービスの安全性にはこれまで様々な懸念が指摘されてきた。
代表的な例が、中国で2017年に施行された国家情報法との関係だ。同法は、国家における安全保障と利益を目的として、国内外の企業や個人が国家の情報工作活動に協力することを義務化している。
国家情報法の存在は、TikTokのユーザーデータが中国政府・共産党に利用される懸念を生んでいる。例えば、トランプ政権下のポンペイオ国務長官(当時)は2020年、「TikTokユーザーの個人データが中国共産党の手に渡っている」と発言し、TikTokが米国にもたらす安全保障上のリスクを主張した。また同年、オープンソースの電子メールサービスProtonMailが公表したレポートでは、TikTokを「極めて危険なソーシャルメディアプラットフォーム」と表現し、「TikTokは大量の個人情報を収集するだけでなく、中国共産党による国境を超えた監視や検閲活動にも協力している」と非難した。
中国政府の検閲も
加えて、中国政府によるTikTokの検閲に関する実態も多々報じられてきた。英・Guardian紙による2019年の報道では、チベット独立問題や天安門事件といった国家にとって好ましくない出来事に関する投稿が、TikTok内部の専任モデレーターによって常時検閲されていることが明らかにされた。
また2020年には、TikTokの英国公共政策責任者が議会公聴会に出席して、中国におけるウイグル人イスラム教徒の窮状に関するコンテンツについて、過去に検閲を受けていた事実を認めた。
削除要請の理由
こうした背景の中、なぜTikTokは再び削除要請の対象となったのだろうか?FCCによる要請内容とTikTok側の反応を見ていこう。