NFTやメタバース、ブロックチェーン、DeFiなど、世間ではWeb3関連の様々なキーワードが飛び交うようになっている。
具体的なWeb3関連のサービスとして、NFTゲームのSTEPNや、NFTマーケットプレイスであるOpenSeaといった名前を聞いたことがある人もいるだろう。本誌でも取り上げたように、その概念・理念自体の説明や、Web3がもたらすウェブの未来像についての解説も見られるようになった。
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しかし、これらのサービスがどのように収益を上げているのか?というビジネスモデルへの理解は、まだそれほど広まっていない。
Web2.0の世界では、クリック課金型などのインターネット広告や、オンラインマーケットプレイス、SaaSによるサブスクリプションなど、その特性を活かしたビジネスモデルが生み出され、多くのプレイヤーが経済的な成功を収めてきた。
それでは、Web3のサービスやプロジェクトはどのように形作られ、その裏にはどのような金銭的な流れがあるのだろうか?現在、立ち現れている主なモデルを、事例とともに紹介しよう(*1)。
(*1)Web3は急速に成長する発展途上の技術領域であり、下記の分類が唯一の正解ではなく、また必ずしも網羅的、あるいは相互に排他的に整理されているわけではない点には留意してほしい。また、複数のモデルを組み合わせているサービスも多い。
トークンの発行
まずWeb3に特徴的なビジネスモデルは、トークンの発行だ。
トークンとは、インターネット上の財産を表すデータのことで、ブロックチェーン上で発行される。「通貨」「ゲームアイテム」「サービスの利用料」「議決権(サービス運用方針を決める権利)」「非代替性の証明」など、様々な機能を持ちうるものだ。
Web3のプロジェクトでは、トークンがどのような役割を果たすと捉えるかによって、3つの方向性から説明を加えることができる。
サービスの対価
まず1つ目は、サービスの対価としてのトークンだ。
Web3のサービスやプロジェクトでは、トークンが特定のサービスにアクセスするための権利としての役割を果たすことがある。そのため、ユーザーはサービス利用時に、事業者が発行したトークンを手に入れなければならない。このトークンの対価として、Web3のサービスやプロジェクトは資金を得ることとなる。
分かりやすい例としては、スポーツ業界で導入が進んでいるファントークンが挙げられる。ファントークンとは、チーム運営方針にかかわる投票への参加や、チケット抽選の優先権、オフィシャルグッズのキャッシュバックなどの様々な権利が付与されたトークンのことだ。トークンを購入したファンがこうした権利を得られるようになり、チームとしては権利の販売による売上の向上が見込めるため、スポーツ業界で注目が高まっている。
FCバルセロナやユベントス、パリ・サンジェルマンといった有名サッカークラブが、Socios.comというプラットフォームを利用して、トークンを発行したことも話題となった。日本でも、湘南ベルマーレなどのスポーツチームが、FiNANCiEを通じて同様の取り組みをおこなっている。
またサービスの対価としては、一般的なウェブサービスに近い例もある。
分散型のデータストレージ・プラットフォームとして知られるArweaveでは、保管するデータ量に対応する料金を前払いする仕組みを取っている。このサービスでは、ARというトークンを発行しており、1GBあたり0.26AR(現在の料金水準で約3.3ドル)を支払うことで、今後約200年間に渡ってそのデータを保管し続けられるようになる。同じく分散型のデータストレージ・プラットフォームのFilecoinも同様に、トークンで料金を前払いする方式を採用している。