シェアオフィス・WeWork の創業者アダム・ニューマン氏が、新たなベンチャー企業 Flow 社を創業し、約3億5,000万ドル(470億円)を調達したことで注目を集めている。投資をおこなったのは、大手ベンチャー・キャピタル(VC)のAndreessen Horowitz(a16z)であり、同VCの投資額としては過去最高となった。
Flow(同社サイト)
Flow は、新たなスタイルの賃貸住宅を提供するベンチャー企業だ。同社の公式サイトには、サービス説明などの詳細は掲載されていないものの、The New York Times(NYT)紙によれば、コミュニティ機能や若い世代向けのサービスなどを提供する、「賃貸住宅市場を再考」するような事業モデルだという。
ニューマン氏が以前手掛けていた WeWork は、一時470億ドル(6.3兆円)もの時価総額をつけるほどの急成長を遂げていたが、同氏による資金の私的流用やセクハラやパワハラの横行などが問題視されると共に、コロナ禍で世界経済の不透明性が高まったことなどにより、2019年の上場を延期。2021年にSPAC上場を果たしたものの、時価総額は約90億ドルとなり、ピーク時の4分の1となった。
ニューマン氏は2019年、17億ドル(約2,340億円)もの退職金パッケージと共に退任しているが、実質的には同社を追われた形だった。
同氏やその経営手法には批判も多かったが、米国を代表する名門VCからの資金調達により、Flowの時価総額は一気に10億ドルを超えた(ユニコーン企業)と見られ、業界のメインストリームに返り咲いた形だ。(*1)同社は、なぜ注目を集めているのだろうか?
(*1)今回の復活劇について、セカンドチャンスを与えるシリコンバレーの前向きな文化として捉える向きも、女性や人種的マイノリティに十分な機会が行き渡らず、白人男性のみが優遇されるボーイズクラブの象徴だと見る向きもある。
Flowとは?
Flow は2023年のサービス開始を予定しており、現時点で事業モデルの全容が分かっているわけではない。しかし、同社のモデルを簡単に説明するならば、以下の通りだ。
事業モデル
端的に言えば Flow は、賃貸住宅(アパートメント、日本で言うマンションのイメージに近い)にコミュニティ機能などの付加価値を持ち込んだサービスだと思われる。現時点では賃貸物件を Flow 自身が保有するのではなく、オーナー(所有者)からの委託を受けて、オペレーター(管理者)として運用するようだ。
Flow が目指すのは「共用のオフィススペースやゴミ出しサービス、ドッグウォーク公園、クラフトビールの提供など」により、「若いプロフェッショナル世帯(*2)の需要に応えるコミュニティーを形成する」ことだと報じられており、ターゲットや世界観としては WeWork に近いものになるかもしれない。
まず同社が手掛けるのは、アダム・ニューマン氏が個人的に所有する物件だ。同氏はマイアミ、フォートローダーデール(フロリダ南東部の都市)、アトランタ、ナッシュビルで3,000戸以上の物件を購入しており、これらが対象となる。これら地域の物件については、今年4月にニューマン氏が「10億ドル以上の価値がある4,000戸以上のアパートの過半数株式を密かに取得」していると報じられていたが、その頃から同社の構想は固まっていたようだ。