SoftBank Group(ソフトバンクグループ、SBG)の孫正義会長は今月8日、4-6月期(第1四半期)に創業以来最大規模の赤字を計上したと発表した。同社が主導する SoftBank Vision Fund(ソフトバンク・ビジョン・ファンド、SVF)の保有銘柄が、世界的な株価下落の影響を受けて評価額を下げたことなどが背景にある。
SoftBank Vision Fund 事業は、10兆円規模の投資ファンドとして2017年に発足した。SVFのポートフォリオには、米・Uber や米・WeWork、中国・Didi など著名テック企業が名を連ねている。
では、SVFが投資してきた企業のうち、どの企業がどれだけ評価を下げているのだろうか。主要投資先について、評価額変動や事業の見通しなどを見ていく。
SoftBank Vision Fund とは
SVFは、SBGが主導する、主にテクノロジー分野のユニコーン企業(*1)を対象とした投資ファンドだ。
同ファンドはSBGの他、サウジアラビア政府系ファンド(SWF)、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国のムバダラ開発公社、米Apple、Qualcomm、台湾の Foxconn Technology Group、日本のシャープによる出資で、ソフトバンク・ビジョン・ファンド1(SVF1)として2017年に発足した。2019年にはソフトバンク・ビジョン・ファンド2(SVF2)が発足し、Microsoftや三井住友銀行、三菱UFJ銀行などが新たに参加。いずれも運用額は10兆円規模となる。
2021年時点でSVFの価値は1385億ドル(約18兆円)に成長し、4年半の運用期間で投資額に対して約40%のリターンを獲得していた。しかし、4-6月期の決算でSVFの損失は3兆円近くに膨らみ、ピーク時には7兆円まで積み上がったファンドの累計利益は、ほぼゼロとなった。
(*1)企業価値が10億米ドル以上と推定される未公開企業を指す。
SVF投資先の評価額変動
SVFの損失は、上場・未上場かかわらず投資先の評価額が下落したことに起因する。
SVF1およびSVF2では、上場企業で約1兆4000億円、未上場企業で約1兆1400億円の損失が計上されている。またSVFとは別にSBGが運用するラテンアメリカ・ファンドでも、ブラジルのフィンテック企業 Inter & Co などの投資先の株価下落を理由に、約3200億円の損失が計上された。また、円安の進行によって同社の外貨建て純負債が円ベースで増加したことから、約8200億円の為替差損も追加計上した。
SVF投資先の評価額低下がSBGの赤字につながる理由は、同社の業績算出方法にある。