米Netflixは9月27日、新たにオリジナルのゲームスタジオを設立すると発表した。Netflixは2021年秋に会員向けのモバイルゲーム提供を開始している。これまでに3つのゲームスタジオを買収していたが、オリジナルのゲームスタジオ設立は今回が初めてだ。
Netflixは、今回の発表について「世界的なゲームスタジオを作るという私たちのビジョンに向けた新たな一歩になる」と述べており、今後もゲーム開発へ大規模な投資を続けていくことを示唆している。
一方で、Netflixのゲーム事業は昨年秋に鳴り物入りでスタートしたにもかかわらず、Netflixの会員全体の0.8%ほどのユーザーしかプレイしていないという数値が報告されており、先行きが懸念される状態だ。
Netflixは、なぜ苦戦しているにもかかわらず、ゲーム領域に大きな投資を進めているのだろうか?
Netflix、新たにゲームスタジオを設立
Netflixは、昨年から会員向けにモバイルゲーム分野に参入している。2022年3月にはヘルシンキに拠点を置くNext Gamesを約7,200万ドルで買収するなど、この1年で3つの外部ゲームスタジオを買収し、ゲーム事業を強化してきた。
これらの買収事例とは異なり、今回の4つ目のゲーム開発拠点設立は、オリジナル・ゲームスタジオの開設となっている。Netflixのゲームスタジオ担当副社長であるアミル・ラヒミ氏は、今回の発表について「世界的なゲームスタジオを作るという私たちのビジョンに向けた新たな一歩になる」と述べており、新たな拠点の設立によりオリジナルゲームの開発環境を整え、コンテンツの拡充を進める狙いだ。
Netflixは、4つのスタジオそれぞれの強みと注力分野、開発メンバーの嗜好に合わせたゲームを開発していくとしており、各スタジオがそれぞれに特色のあるゲームを作っていくことになるという。
ヘルシンキの新スタジオの計画については、今後予定されている人員数や開発予定のプロジェクトなどの詳細は明らかにされていないが、今後さらに情報が公開される予定だ。
なお、新たなスタジオはヘルシンキに拠点が置かれ、大手ゲーム会社のZyngaやElectronic Artsで要職を務めたマルコ・ラスティッカ氏が責任者に就任する。ラスティッカ氏は、『シムシティ ビルドイット』や『FarmVille 3』の開発に携わったゲーム業界の著名人として知られる。設立場所にヘルシンキが選ばれた理由についてNetflixは、「(この街に)世界最高のゲームの才能が集まっているから」と説明している(*1)。
(*1)ヘルシンキ周辺には世界的に有名なゲーム制作会社が存在している。例えば、『Clash of Clans』の開発元であるSupercellは同市の市街地にあり、『Angry Birds』で知られるRovio Entertainmentや『Control』のRemedy Entertainmentは、隣のエスポー市に拠点を置いている。Netflixのヒットシリーズ『ストレンジャー・シングス』を題材にしたモバイルゲームを制作したNext Gamesも、本拠地はヘルシンキだ。
なぜゲームに注力?
ゲーム業界のアナリストであるエリック・ゾイヘルド氏は、今回の新スタジオ設立を受けて、「Netflixは、明らかにゲームを戦略的に重要なものと見なしている」とコメントしている。
Netflixは、今年中には現在の32タイトルから50タイトルにまでゲームの投入タイトル数を増加させる方針も掲げており、大きな投資をおこなっていることは間違いない。
一見ストリーミングからは遠い距離にあるようにも思えるゲーム領域だが、Netflixはなぜこの分野に注力しようとしているのだろうか?