⏩ 広告つきプランには解約を留める効果がある一方、会員数に課題
⏩ アカウント共有の厳格化と、ターゲット広告の導入により変化も?
2022年11月、Netflixは「広告つきベーシックプラン」を開始した。新規の会員層獲得、新たな収益源の確保を目的に始められた広告つきプランであったが、同社の2022年第4四半期決算では、営業利益、純利益ともに前年同期比を下回る結果となった。
Netflixは現在のサブスクリプションモデルでの動画配信サービスを開始以来、2021年まで10年連続で会員数を増加させていた。しかし、国際情勢の変化や動画ストリーミング市場の飽和なども相まって2022年に初めて会員数が減少し、同社は方針転換を迫られることとなった。そうした背景から、さらなる会員の獲得、収益源の多様化などを目的に2022年末にNetflixは広告つきプランを開始した。
広告つきプランが提供されてから3ヶ月が経ち、第4四半期決算も公開された今、その成果を見ていきたい。
なぜNetflixは広告つきプランを導入したのか
Netflixはなぜ、広告つきプランを導入したのだろうか。その背景には、同社の成長鈍化と他社ストリーミングサービスとの競争の激化の2点が挙げられる
Netflixは成長が停滞中
Netflixは現在、成長が停滞している。「巣ごもり消費」によって飛躍的な成長を遂げた同社であったが、国際情勢の変化などによって会員数が減少に転じたからだ。
新型コロナウイルスの世界的な流行で人々の行動が制限されたことによる「巣ごもり消費」の影響もあり、Netflixの会員数は2億人を突破していた。しかし、世界的なインフレ、ロシアのウクライナ侵攻によるロシアでの事業停止などの国際情勢に加え、ストリーミング市場の飽和が会員数の減少に影響を及ぼしている。
こうした影響を受け、同社の会員数は21年第4四半期と比べ、22年第1四半期には20万人減少、22年第2四半期には140万人減少した。
20年までの記録的な成長もあり、会員数の減少は投資家や市場に「Netflixショック」として受け止められた。
他社サービスとの競争
Netflixは他の動画ストリーミングサービスとの激しい競争にもさらされている。ライバルの1つがDisney+だ。
Disney+はウォルト・ディズニー・カンパニーが2019年11月に開始したストリーミングサービスである。同サービスを含むディズニー社のストリーミングサービス会員数が22年11月には2億3500万人を超え、Netflixを上回る勢いを見せている。Netflixと同サービスを比較すると、ディズニーの持つ豊富なIPと、比較的安価な7.99ドル(現在は広告つきプラン)とNetflixよりも価格を低く設定した点に特徴があると言える。
また、競合はDisney+だけではない。Amazon Primeもその会員数は全世界で2億人を突破している。Amazonの持つ豊富な経営資源が投下され、2022年第1四半期においては全米シェア1位を誇る映像ストリーミングサービスとなっている。
このように、人気コンテンツを多数抱えるDisney+や、米国価格で14.99ドルと価格自体は比較的高いものの、豊富な会員特典の利用が可能なAmazon Primeが競合に挙げられる。
こうした激しいストリーミング市場での競争の中、サブスクリプションに主要な収益源を依存するNetflixは初の会員数減少へと転じ、さらなる会員層の開拓、収益源の多様化を迫られた。
広告つきプランへの反応は?
上述のような厳しい状況の中、Netflixは同社として初となる広告つきプランの提供を22年11月に開始した。
このプランは当初は23年初旬に提供される計画だったが、経済状況の悪化などから前倒しで始められた形となった。同プランの価格は6.99ドルに設定され、15.49ドルのスタンダードプランの半額以下で提供されている。さらにこの価格は、先行して開始されたDisney+の広告つきプランの7.99ドルをも下回る価格設定となった。
広告つきプランが開始されてから3ヶ月、同プランの現状はどうなっているのだろうか。
解約を留める効果
広告つきプランは、会員の呼び戻しと解約の引き止めという2点において効果があることが指摘されている。