⏩ 脳インプラントの人体臨床試験が可能に
⏩ 過去にはサルへの実験で争いに発展
⏩ 規制当局の承認の背景とは
⏩ 先を行くライバルとの争いが今後のポイント
イーロン・マスク氏が所有する Neuralink は、開発中の脳インプラントについて、米・食品医薬品局(FDA)から、人体の臨床研究を実施する許可を得たと発表した。同社のデバイスが目指すのは、麻痺などの疾患を持つ人々が、思考だけを使ってコミュニケーションし、コンピューターを制御できるようになることだ。
過去には、臨床研究の申請を却下されたこともある Neuralink だが、今回 “合格” を勝ち取った格好だ。
しかし、同社のおこないに対しては、厳しい視線も向けられている。なぜ、Neuralink は物議を醸してきたのだろうか。そして、FDA が承認を与えた背後にある理由とは何なのだろうか。
Neuralink とは
Neuralink は、2016年に創業された医療機器会社だ。Link と呼ばれる脳インプラントを開発しており、アルツハイマー病、認知症、脊髄損傷などの神経疾患の治療支援を目的としている。そのために、人間の頭蓋骨にドリルで穴を開け、数千の糸状の電極を含む、ブレイン・コンピュータ・インターフェースを埋め込む。これとコンピューターなどのマシンを有線または無線で接続し、情報をやり取りする仕組みだ。
くわえて、マスク氏のねらいは、患者の治療という枠を超え、最終的に人類と人工知能を融合させることにある。地球規模の課題を掲げ、その解決策として自社事業を推進することを得意してきた、同氏らしい手法だ。
目的も去ることながら、開発のスケジュール体制にもマスク氏の ”らしさ” があらわれている。