⏩ ウクライナ戦争での Starlink 活用に、中国政府の警戒強まる
⏩ 台湾統一のハードル上昇や民主化の加速を懸念か
⏩ 低軌道の覇権争いで米中関係悪化のおそれも
イーロン・マスク氏率いる SpaceX の Starlink(スターリンク)に対して、中国政府の警戒心が強まっている。
Starlink は、SpaceX が提供する衛星インターネットサービスで、日本でも2022年にサービスが開始された。地球低軌道の衛星を利用することで、通信インフラが整備されていない地域でも高速・低遅延のインターネット接続を可能にしている。最近では、ウクライナの紛争地域における通信手段として活用されたことで注目を集めた。
The Economist 誌は先月18日、中国人民解放軍が同サービスについて警戒を呼びかけていると報じた。ウクライナ戦争での Starlink 活用を受け、懸念が高まったと見られる。
中国は何を恐れているのだろうか? また Starlink と中国をめぐって、どのような問題が起きているのだろうか?
中国によるStarlink懸念
中国は、Starlink に対する懸念を明確に示している。昨年12月、SpaceX が Starlink を活用した政府向け衛星サービス Starshield を発表した際、人民解放軍の機関紙・解放軍報は「宇宙における軍事覇権を狙う米国の野望が完全に露呈した」との見解を示した。続けて、その脅威に対し「高いレベルの警告を維持する必要がある」としている。
またロイターの調査によれば、人民解放軍系の研究者たちは「中国が Starlink の衛星を撃墜する、あるいは無効化する方法を見つけることが "急務" だ」と述べている。
さらに、イーロン・マスク氏が Financial Times 紙の編集者であるローラ・カラフ氏に語ったところによると、同氏は中国内で Starlink を販売しないという確約を、中国政府から直接求められた。
一体なぜ、中国はこれほど警戒感を露わにしているのだろうか? その理由を理解するためには、ウクライナ戦争における Starlink 活用という背景を押さえる必要がある。
ウクライナ戦争でのStarlink活用
Starlink は、紛争下にあるウクライナの通信維持に貢献したことで注目を集めた。