⏩ 従来品の課題を克服し、空間コンピューティングの普及を実現する可能性
⏩「販売価格3,500ドル」の高価格、市場は評価に悩む
⏩ 一般向け廉価版製品の発売で広く普及を目指せるか?
2023年6月5日(現地時間)、Apple が毎年恒例となる開発者会議・WWDC を開催した。最新チップ M2 Ultra や各種 OS の最新版などが次々に発表される中、一際目を惹いたのが VR/AR ヘッドセットである Vision Pro の発表だ。
Apple のティム・クックCEO が自ら壇上に上がり、「One more thing…」と切り出した後、およそ30分間にわたって Vision Pro をアピールした。これはイベントの約1/4にあたる時間であり、Apple がいかに Vision Pro に重点を置いているかが見て取れる。
これまで、Meta を始めとした多くのメーカーがヘッドセットの普及を試みてきた。しかしこれらの計画は、装着時の不快感などが原因で難航している。
一方、今回発表された Vision Pro は革新的な技術でこの課題を克服し、人々が求めてきた空間コンピューティングの普及を実現する可能性がある。仮に実現すれば、かつて Mac や iPod、iPhone のような大きな社会的変化をもたらすことは明白だ。Vision Pro は米国では2024年初旬から、その他の国や地域では同年後半から、3,500ドル(約50万円)での発売を予定している。
なぜ、Vision Pro は革新的だとされているのだろうか?今後注目したいポイントとあわせて見ていこう。
Appleのヘッドセット、Vision Proとは?
Vison Pro の革新性を理解するために、現行のヘッドセットの市場規模や課題、Apple のこれまでの XR に対する取り組み、市場とユーザーの評価を見ていこう。
ヘッドセットの市場規模
VR ヘッドセットの2023年における予測市場規模は、8,568万ドル(約123億円)だ。ビデオゲームの予想市場規模が3,849億ドル(約55兆円)であることを考えると、まだ成長余地のある市場といえる。また、ビデオゲームの普及率45%と比較すれば、VR ヘッドセットの普及率は1.3%と所有者はまだ少ない。
コロナ禍の影響により、メタバースへの期待感増幅を受けて市場は一時活性化した。特に2021年10月の Meta の社名変更は、メタバースに対する期待感を呼び起こした。
しかし、2023年に入ってから Walt Disney、Microsoft、Meta などでメタバース部門の廃止やレイオフが相次いでおり、市場は曲がり角に来ている。