⏩ 安く大量に生成された虚偽の画像・動画がネット上に溢れる
⏩ ポリシー変更によるプラットフォームの「諦め」が懸念を助長
⏩ 事実とフィクションを区別する戦いに乗り出す企業も
2023年6月26日(現地時間)、Google の元CEO エリック・シュミット氏は、AI と誤った情報によって「2024年の選挙は大混乱になるだろう」と述べた。7月11日には、Microsoft の創業者ビル・ゲイツ氏も「AI によって生成されたディープフェイクや誤った情報は、選挙や民主主義を損なう可能性がある」と警告した。
ネット上には、すでに AI によって生成された偽のコンテンツが溢れている。たとえば、バイデン大統領がトランスジェンダーの人々を攻撃する演説をおこなう偽の動画や、米国の図書館で、子どもたちが悪魔崇拝を教育されている写真などが挙げられる。
AIによって生成されオンライン上に投稿された虚偽の画像(The Pumpkin Empress via Facebook)
ジェネレーティブ AI(生成系AI)をはじめとする AI がもたらすとされる危機(とその考えへの反論)については以前本誌でも報じたが、惨事シナリオの1つとして掲げられていたのが誤情報の氾濫だ。
米国のリーダーを決める大統領選挙が来年に迫っていることを受けて懸念が相次いでいるが、背景には AI が誤った情報を生成するという点だけではなく、ソーシャルメディア・プラットフォームの「諦め」も指摘される。
さらに、人間の指示に従っているはずの AI によって、逆に人間側の政治的な考えが書き換えられる可能性についても示唆され始めた。
AI と誤情報がもたらす混乱は、選挙という文脈においてどんな点が問題視されており、その原因は何にあるのだろうか。そして、どのような対策が施されているのだろうか。
何が問題視されているのか?
2023年に入ってから、AI によって生成された誤情報が政治的な文脈において混乱をもたらしており、2024年の大統領選挙においても同様の問題が生じると考えられている。大きく2つの方向性があり、誤った情報が蔓延することへの懸念と、それに伴って現実が否定されることへの危惧だ。