⏩ 今秋開催を目指す平和サミットへの準備
⏩ ウクライナ、サウジ双方にとって中国・グローバルサウスの参加が利益に
⏩ 中ロの乖離や中堅国の伸長も示唆され「典型的な会議ではない」とする指摘も
ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、2023年8月5日から6日(現地時間)にかけてサウジアラビアのジッダで和平会議が開催された。今回の会議は、2023年6月24日にデンマークの首都コペンハーゲンで開催された会議に続くものだが、「典型的な和平会議ではない」とも言われる。
ウクライナのゼレンスキー大統領は会議に先立つ8月2日、本会議が「平和サミット」を今秋に開催するための足がかりになると述べ、国際的な注目が集まっていた。「平和サミット」は、ロシア軍の撤退などを盛り込んだ、ウクライナ側が主張する和平案について各国の首脳を招いて協議するものだ。
一方のサウジアラビアとしては、仲裁役を買って出ることで国際的な影響力を高めようとする狙いが示唆されている。対立を利用し、利益を享受しようとしているが、本会議のメディア公開をめぐっては綱渡りとも思われる側面も垣間見えた。
ウクライナ政府高官は、サウジアラビアで会議が開催されたことは偶然ではないと語るが、その理由は何だったのだろうか。そして、今回の会議が注目された理由はどこにあったのだろうか。
サウジアラビアで開催された和平会議とはなにか?
今回開かれた和平会議は、2023年8月5日から6日にかけてサウジアラビア西部に位置する大都市ジッダで開かれた国際会議だ。
同会議には、30カ国以上の政府関係者が招待され、前回のコペンハーゲン会議の3倍近い40以上の国と国際機関が参加した。
具体的には、G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ)、EU の他、ロシアを除く BRICS(中国、インド、ブラジル、南アフリカ)、さらにチリ、エジプトなどのいわゆるグローバルサウスの国々が集まった。
一方、ロシアは招待されず参加に至らなかった。ウクライナのアンドリー・イェルマーク大統領府長官は、国際法と国連憲章に準ずる国家による会議であることを理由に、ロシアを歓迎しない意向を示していた。
今秋開催を目指す「平和サミット」に向けた準備
今回の和平会議の目的は、ゼレンスキー大統領が今秋開催を目指している「平和サミット」に向けた準備をすることにある。
具体的には、ウクライナが提示する「10項目の和平案(10-point peace plan)」(以下、和平案)について協議された。和平案は、ゼレンスキー大統領が、2022年11月にインドネシアで開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で打ち出した、ロシアとの和平協議を始めるための前提条件のことだ。和平案が求める条件は以下の10項目で、ロシア軍の撤退やウクライナの領土保全などを盛り込んだ内容となっている。