11月8日、米大統領選における民主党・バイデン前副大統領の勝利が確実となったことで、米国内外に大きな影響を与えると見られているが、その影響は大麻業界にも及んでいる。
バイデン氏の勝利により、大麻関連企業の株価は10〜20%上昇したのだ。民主党政権下での州レベル、そして連邦レベルでの合法化で市場が拡大する期待感が高まったことが、その理由とされている。
米大統領選と前後して、ニュージャージー州、サウスダコタ州、モンタナ州、アリゾナ州の4州で娯楽用大麻の、ミシシッピ州で医療用大麻の合法化が、各州内の投票で可決されたこともあり、他の州も相次いで大麻解禁に向かうドミノ効果によって、国内市場の拡大するという見方もある。
連邦法レベルでの合法化も、民主党陣営の勝利で現実味を帯びてきている。
副大統領となったカマラ・ハリスは2019年、規制物質法から大麻を除外し、連邦法に基づく刑事罰を撤廃する法案(MORE法)を共同で提唱していた。MORE法には、犯罪歴の抹消を促進し、犯罪対策や社会改革に資金を提供するために大麻製品に5%の税金を課すことや、マリファナの使用を理由にした連邦政府レベルでの不利益をなくすことが織り込まれている。この法案の決議は延期されていたものの、政権を獲得したことで審議の再会が見込まれる。
犯罪抑止効果については議論の余地があるものの、社会正義の改革は連邦レベルと州レベルの両方で、合法化の重要な論点となっている。
しかし、社会正義だけでなく経済的な側面も、大麻合法化にとって重要な論点だ。具体的に言えば、合法化による税収増加と、新規産業による雇用創出への効果が期待されている。
では、大麻合法化による経済効果は実際どのようになっているのだろうか。
大麻市場の概況
そもそも、大麻市場はどの程度の経済規模なのだろうか。
結論から言えば、大麻市場は大規模かつ成長市場である。2019年時点でのアメリカの合法大麻市場の全体的な売り上げは、前年比32%の成長で136億ドルにのぼり、2025年には医療用・娯楽用をあわせて300億ドルまで上昇すると予測されている。
これに合わせて、2018年には推定643億ドルを売り上げたとされるアメリカの違法大麻市場は2025年には70億ドル近く縮小すると見られている。
また、アメリカの市場調査会社Arcviewによるレポートでは、世界の合法大麻産業の収益は2020年にさらに38%増加して204億ドルになると予測され、売上高は2025年に468億ドルに達すると見込まれている。このように、大麻市場はアメリカ国内だけで違法市場を含めて現状約8兆円の市場規模を持ち、世界的に見ても成長中である。
また、大麻製品の国際的な輸出入取引も、まだ大麻が合法化されていない国々を含めて増加している。大麻オイルは、2019年に輸出入額が約31億ドルとなっており、2015年以来全世界で38.6%の成長を見せている。日本が1億5580万ドルで第5位の輸入国となるなど、大麻使用が禁止されている国でも商機があり、今後合法化される国が増えれば、よりさまざまな商品が取引される可能性がある。
一方で、大麻の価格は国によって大きく異なっている。