東京五輪に参加するため来日した後、大阪・泉佐野市での合宿中に一時失踪したウガンダの重量挙げ選手のジュリアス・セチトレコが、自国で詐欺容疑によって拘束された。
同選手は「生活の苦しい国には戻らず、日本で仕事をしたい」と述べ、難民申請を希望する意向を見せていたが、日本の警察により同国大使館に引き渡された。この対応について、難民を支援する全国難民弁護団連絡会議は「失踪が反政府的な活動とみなされ、帰国後に過酷な処罰をされる危険がある」と指摘しているが、その懸念に現実性が増している状況だ。
ウガンダ政府は、今回の問題を「受け入れ難い裏切り行為」とした上で、同選手に「リハビリを継続していく」と発表しており、同選手の処遇に懸念が高まっている。ウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領は「独裁的」とされ、国際的な人権団体アムネスティ・インターナショナルが人権状況を懸念するなど、公正な処分がなされると考えづらいためだ。
では、ウガンダはどのような政治、経済、そして人権状況にあるのだろうか?
ウガンダとは
ウガンダは、東アフリカに位置している内陸国で、1963年に英国の植民地から独立した。首都はカンパラで、面積は24.1万平方キロメートルでほぼ本州と同じ大きさ、人口は4,427万人(2019年時点)となっている。
ケニア、タンザニア、南スーダン、コンゴ民主共和国などと国境を接しており、広大で肥沃な土地により農業が盛んとなっている。
ウガンダ(Google Map)
ウガンダの政治状況
1986年以降、ウガンダは35年にわたってヨウェリ・ムセベニ大統領による政権が続いている。同大統領は、もともと長く続いた政治的混乱と独裁政権を打ち破るために、開発と民主主義の実現を約束して就任した。しかし、かつて「自由の闘士および解放者」と呼ばれていた面影はなく、今や「独裁的な指導者」と称される存在だ。
ムセベニ大統領(U.S. State Department, Public domain)
1990年代:「新世代の指導者」
1990年代、ウガンダやルワンダ、エチオピアなどの指導者はアフリカにおける「新世代の指導者(new generation of leaders)」と称されて期待を集めていた。