中国の著名プロテニスプレーヤーの彭帥氏は今年11月、中国・共産党幹部であり元副首相の張高麗氏から受けた性的暴行を公表した。共産党幹部に対する初めての #MeToo に関する告発だったため、世界中から注目が集まったが、同氏による Webio の投稿文はすぐさま削除され、彭帥氏自身も公の場から姿を消す事態となった。
中国ではあらゆる社会運動が制限されており、性暴力やハラスメント被害を訴える #MeToo 運動も例外ではない。世界中で #MeToo 運動が盛んになったことを受けて、中国国内では「MeToo」という単語自体が既に規制対象となっていた。
しかし、中国政府からの抑圧を受ける中でも、同国内で #MeToo 運動は徐々に盛んになっている。中国における#MeToo運動は、どのように展開されてきたのだろうか?
#MeToo運動のきっかけと展開
中国における #MeToo 運動は、2018年に性被害を告発した周暁煥氏によって大きな注目を集めたとされる。周氏は2014年、国営放送局の中国中央電視台でインターン生として働いていた際、著名なテレビ司会者である朱軍氏から性的暴行を受け、そのことを4年後の2018年に公表した。
周氏は「すべての女性が、自分が苦しんでいることを声に出すことが重要」だと述べ、それをきっかけに中国国内でも女性による性的被害の告発が続き、中国国内での #MeToo 運動の拡がりにつながった。
周氏による告発があった2018年には、中山大学教授の性的暴行事件や仏教指導者の性犯罪事件をはじめ、十数人の被害者から告発がおこなわれた。さらに2019年には、上海市内の地下鉄で痴漢を働いた男性に対して懲役6ヶ月の判決が下り、公共交通機関における性的暴行として初めて刑事罰が科された事件として注目を集めた。
2021年にも
今年に入っても、性的暴行事件の告発は続いている。今年8月、中国系カナダ人のポップスターであり、K-POPグループEXOの元メンバーであるクリス・ウー氏が、17歳の少女に対して性的暴行を働いたとして、北京警察によって逮捕された。周氏同様、Weiboでの告発が逮捕につながった事件であると共に、著名なセレブリティによる事件として国際的にも大きく報道された。
翌月には、Alibaba 社のマネージャー職を務めていた男性社員が女性部下に性的暴行を働き、この加害者は解雇された。そして11月には冒頭で述べた通り、プロテニスプレーヤーの彭帥氏による告発が国内外から注目を集めた。
中国でオンライン運動 Feminist Voices を立ち上げた活動家のリュウ・ピン氏は、The New York Times紙の取材に対して「#MeToo運動が始まった3年前は、ここまで声が拡がるとは想像していなかった」として、中国における#MeToo運動の流れを評価した。
中国政府による対応
しかし中国・共産党は、#MeToo運動やフェミニズムのような女性の権利をめぐる国民の抗議や論争を抑え込む方向で動いている。
#MeToo運動の発端となった周氏の告発は Weibo から削除されており、あらゆる#MeToo運動に関するインターネット上の発言は、検閲や削除を受けている。