韓国でメタバース構築に向けた取り組みが活発化してきている。
スタートアップから大手テック企業まで、世界中の企業がメタバースに力を入れているが、韓国では民間企業が急速にユーザーを獲得し始めているとともに、メタバースに関連した促進政策が打ち出されるなど、官民が一体となって力を入れていることが特徴だ。
メタバースという概念は、非常に広大なものであり、「時間をかけて構築されていくエコシステム」でもあるため、具体的なイメージがつかみにくいことが多い。しかし、韓国で実用化に向かいつつあるメタバース・サービスは、従来のエンタメ、ゲーム分野のみならず、日常生活や産業分野での活用も視野に入れているものが多く、先進事例の参照先としても有用なものとなるだろう。
韓国のメタバース戦略の現状はどのようになっており、今後どのように展開していくのだろうか?
韓国のメタバース戦略の現状は?
コロナ禍であらゆるサービスやイベントの非接触化が進む中、5Gネットワークの普及など、デジタルインフラの整備が進んでいることもあり、韓国ではメタバースが次世代プラットフォームとして急浮上し、バズワード化している。
韓国の主なメタバースプラットフォームは現在、大手インターネットサービス会社NAVERの子会社であるNAVER Zが提供する ZEPETO と、大手モバイルキャリアであるSKテレコムが提供する ifland が二強とされる。
また国や政府のレベルでは、「デジタルニューディール」政策の一環として、国内500社が参加する「メタバース・アライアンス」が創設され、「メタバース新産業先導戦略」という国家戦略が発表された。首都ソウルは都市ごとメタバース化して、仮想空間上で行政サービスを提供する計画も進んでいる。
それぞれの事例について、以下で見ていこう。
2.9億人のユーザーを抱えるZEPETO
ZEPETO(ゼペット)は、NAVER Zが提供するメタバース・プラットフォームだ。NEVER Z はもともと顔認識する画像加工カメラアプリ「SNOW(スノー)」を開発しており、そこから派生する形で ZEPETO が生まれた。
ZEPETO では、ユーザーが自分の3Dアバターを作成し、プラットフォーム内で様々な仮想世界を訪れて、同じ世界内にいる他のユーザーと交流することができる。
ZEPETO は2018年にローンチされ、ユーザー数はすでに世界で2億9,000万を超えており、Z世代と言われる13歳から24歳の若い女性ユーザーが7割を占める。ユーザーの9割が韓国外からアクセスしており、国別では、韓国をはじめとして、中国、フィリピン、アメリカ、日本、フランス、インドネシア、マレーシア、タイ、メキシコなどに広がっている。ユーザー属性としては、他のメタバース的なサービスには人数が少ない、若年女性層を多く抱えていることが特徴だ。
ファッションに焦点
このユーザー属性は、ZEPETOがファッションに重点を置いていることと大きく関係しているとされている。ZEPETOのユーザーは、アプリ内のショップで様々なアイテムやアクセサリーを購入し、自分のアバターの髪型やメイク、体系を変化させたり、服を着せ替えたりすることができる。
その画像やショート動画を撮影し、一般的なSNSのように投稿してフォロワーに共有することも可能だ。アバター用のジェスチャーやダンスも豊富であるため、アプリ内にあるフィードはアニメーション版のTikTokのようにも見える。(例えばBLACKPINK LISAの投稿はこちら。)
他にも、ユーザーはZEPETO上でゲームをプレイしたり、クリエイターや企業公式アカウントが特定のコンセプトに基づいて作成した「ワールド」という仮想世界を訪れたりすることができる。