2021年3月16日、新型コロナウイルスに伴うロックダウンにより、2020年における世界のCO2排出量は減少したものの、再び増加傾向にあることが報じられた。
新型コロナウイルス流行後における世界のCO2排出量の変化を追っていくと、ロックダウンが始まった2020年前半は前年同期比で8.8%減少し、2020年通年では前年比で7%減少した。しかし2020年12月だけを見ると、オランダやドイツ、フランスやイタリアなど、欧州を中心にいまだにロックダウンが実施されている国があるにもかかわらず、前年同月よりも2%増加した。
CO2排出量の増加傾向に関する同調査結果を発表した国際エネルギー機関(IEA)の事務局長であるファティ・ビロル氏は、「2021年に世界経済の回復が確認され、大きな政策の変更がない場合、世界のCO2排出量は増加する可能性が高い」と述べている。
パンデミックによる経済活動の変化が、気候変動に一定度の影響を与えていることは事実だが、具体的にどのような変化を及ぼしているのだろうか?そして、気候変動対策は今後どのような形で進められるのだろうか?
気候変動と新型コロナウイルスの関連性
気候変動とは、ある場所で見られる天候の変化を指す。これは年間雨量の変化や、月ごとあるいは季節ごとの気温変化かもしれない。また、雪や雨が降る地域の変化の可能性もある。現在、世界は気候変動と新型コロナウイルスという2つの危機に直面しているが、両者に関連性はあるのだろうか。
現時点では、気候変動が新型コロナウイルスのパンデミックに影響を及ぼしているという直接的な証拠はない。しかし、気候変動が人間と他の種との関係を変え、健康と感染のリスクに影響を与えることはわかっている。気候変動がウイルスの感染リスクに影響を与える具体的な原因を見ていこう。
人間と野生生物の接近
新型コロナウイルスの発生源は未だ明らかになっていないが、野生動物から人間にウイルスが移ることが多くなってきている。その例として、鳥インフルエンザやデング熱(蚊)、エボラ出血熱(サル)、サル痘(プレーリードッグ)などがある。これは、気候変動によって病気を媒介する動物の生息地が破壊され、種間の接触が増加するからだ。これは以下のように指摘されている。
自然破壊によって、住む場所を失った野生動物が餌を求めて人の住む町に近づいてきたり、希少種を食料や漢方として利用することで、人と動物が接触することになり、新たな「人獣共通感染症」が生まれる。
また、畜産による動物への過度な接触も感染リスクを高めるとされている。
平均気温上昇により動物が極地へ移動
地球の平均気温上昇により、高気温から抜け出そうと、あらゆる動物が南極・北極に向かって移動していることも関係している。これは、通常は接触しない動物同士が接触するようになることを意味し、病気を媒介する新たな動物にウイルスが侵入する機会を生み出す。
たとえば、デング熱は熱帯地域の感染症というイメージが強いかもしれないが、地球の平均気温が上昇すれば同感染症を媒介する蚊の生息域も南極・北極に向かって拡大し、再流行する可能性も否定できなくなる。