米国西部で大規模な山火事が発生している。今年の8月から9月にかけて、カリフォルニア、オレゴン、ワシントンなどで多くの山火事が発生し、街中がオレンジに染まる様子がインターネット上で拡散されるなど、世界的な注目を集めた。
これまでに東京都の約10倍の面積に当たる約2万平方km近くが焼失し、死者35人、行方不明者も数十人に上るなど、被害は史上最悪の規模となっている。これを受けてアメリカのドナルド・トランプ大統領は14日、カリフォルニア州を訪れ、山火事に対応する危機管理当局幹部と面会した。
米西海岸各地の当局者からは、大規模な山火事の発生について地球温暖化の影響を懸念する声が相次ぐ。しかし、地球温暖化に懐疑的なトランプ氏は「そのうち涼しくなる」と述べ、その見方を否定。火災予防のための枯れ枝除去など森林管理の重要性のみを強調した。これに対して、民主党候補のジョー・バイデン前副大統領(77)は、温暖化や乾燥といった気候変動が山火事の一因との見方を示しており、同日の演説でトランプ氏を「気候放火犯」と表現して批判している。
近年、世界各地で前例のない大規模な山火事が発生している。今年は米国西部の他にも、オーストラリアで記録上最大の山火事が発生してポルトガルの国土を上回る面積が焼失しており、北極圏、アマゾン、中国・四川省でも異常に激しい火災が発生している。また、昨年はアマゾンで記録上3番目に大きな火災があり、インドネシア・スマトラ島、北米、シベリアなどでも猛烈な火災が起きた。
世界気象機関(WMO)は今年1月15日に、2019年の世界の平均気温について、観測史上2番目に高かったと発表した。2010年から2019年までの10年間の平均気温は、観測史上最も暑かったという。このように地球の平均気温が近年上昇しているのは事実だが、バイデン氏が述べるように気候変動は山火事のリスクに影響しているのだろうか。そして、山火事のリスクは将来的にどのように変化していくのだろうか。
山火事はいつ、どこで、なぜ発生しているのか?
山火事は世界中で頻繁に発生している災害だ。放牧地、森林、草原、泥炭地など、自然の土地で発生する火災のことを指す。具体的に山火事の発生原因、発生時期や地域を見ていこう。
山火事の発生原因は人為的原因と自然原因の2つに分けられる。人為的原因として多いのは焚き火や火入れ(焼畑農業)、タバコ、放火など。自然原因としては主に落雷によって発生するものが多い。発生原因の内訳は、人為的原因によるものが世界的に見ても多く、全体の96%を占める。自然原因で発生する山火事は4%と推定されている。しかし、この割合は地域によって大きく異なっていて、例えば日本では森林火災のほとんどは人為的要因であると報告されているが、米国では山火事の16%が自然原因によって発生しており、カナダでは55%もの山火事が雷を原因としている。
山火事の発生時期も地域によって大きく異なる。これは雨が多い時期と乾燥する時期が地域によって変わるからだ。北米、アマゾン、アフリカ南部、オーストラリアの一部では、8月頃から11月下旬にかけて火災が増加する傾向にある。そして、これらの時期はアフリカ南部やアマゾンでは乾季の最盛期と重なる。対照的に、中央アフリカや東南アジアの一部では、12月から3月にかけて火災の大半が発生する。これは、赤道の北に位置するアフリカのサヘル地域の乾季のピークと重なっている。
火災の発生時期や発生場所は、エルニーニョなどの世界の主要な気候システムにも影響される。特に近年では東南アジアの火災がエルニーニョの影響を受けていると指摘されている。エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域東部の海面水温が平年より高くなる現象のことで、通常時はより暖かい太平洋西部に発生する積乱雲の発生位置を、東側に移動させる効果がある。そのため、強いエルニーニョは太平洋西部の地域に暑くて乾燥した天候をもたらす。
2015-16年には、強いエルニーニョ現象が発生し、東南アジアに干ばつを引き起こした。これによってインドネシアの山火事は急増し、ブラジルの年間総排出量と同規模の温室効果ガスの放出が起きた。気候変動は極端なエルニーニョ現象の頻度を増加させることが報告されており、干ばつの激化を通して山火事のリスクを高めていると言える。
地球温暖化は山火事のリスクにどのような影響を与えているのか?
エルニーニョ現象の例のように、地球温暖化は直接的・間接的に山火事のリスクを増加させているというのが研究者たちの一般的なコンセンサスとなっている。
その理由は、地球温暖化によって大規模な山火事が発生しやすいとされている特定の気候条件にあたる気象が増えていることと、実際の山火事において地球温暖化が大きな要因であると結論づけられるデータがそろってきていることの2つだ。