中国・習近平国家主席は21日、中国が国外で新たに石炭火力発電所を建設しないことを表明した。国際社会でカーボンニュートラルに向けた取り組みが加速する中、大国として新たな公約を示すことで気候変動対策の先頭に立っていく考えだ。
このように各国は、自国の発電における石炭火力発電の割合を減らしつつ、再生可能エネルギーの割合を増やすことで、よりクリーンな電力へと移行しようとしている。日本政府も7月21日、エネルギー政策の方針を定めた「第6次エネルギー基本計画」の素案を発表し、新たな電源構成案を提示した。ここでは、2030年度の二酸化炭素排出量を2013年度比で46%削減する目標のため、同年度には再生可能エネルギー(再エネ)比率を36-38%まで拡大することが掲げられている。
この電源構成とは何なのか?そして政府はどのような電源構成案を打ち出し、何を達成しようとしているのだろうか。
電源構成とは
電源構成とは、発電において利用されるエネルギー源の割合だ。エネルギー源とは、化石燃料(石炭、石油、ガス)・核燃料・再生可能エネルギーなどを指す。エネルギーミックスとも呼ばれており、その構成は国や地域によって大きく異なるが、世界的には化石燃料が大半を占めている。
日本では、1970年代の2度のオイルショックをきっかけに、電源構成の多様化に取り組み始めた。この頃は、全発電量の6割以上を石油による火力発電が占めていたため、燃料不足が大きな問題となった。中東での地政学的リスクによって原油の供給不足になったり価格が高騰した場合、日本の発電にも多大な影響が生まれることが明らかとなり、石油の依存度を下げつつ、天然ガスや石炭、原子力などを活用することが喫緊の課題となったのだ。
加えて近年では、東日本大地震にともなう福島第一原子力発電所事故によって「脱原発」の世論が高まり、気候変動対策のため「脱石炭火力」の要請も高まっていることから、電源構成のあり方に一層注目が集まっている。
安全保障や自然災害、そして気候変動や事故などのリスクを考えると、安定的で安価な電力供給のためには、1つの電源に頼らずに複数のそれを活用しつつ上手く組み合わせること、いわゆるエネルギーのベストミックスが重要視されるのだ。
電源の種類
では、エネルギー源(電源)にはどのような種類があるのだろうか。
世界には、発電のために利用するエネルギー源として水・石油・石炭・LNG(液化天然ガス)・原子力・太陽光・風・地熱・バイオマスなどが存在する。これらは、大きく分けてベースロード電源・ミドル電源・ピーク電源の3つに分類される。
ベースロード電源
ベースロード電源とは、昼夜問わず継続的に稼働でき、発電コストも低い安定的な電源のことだ。一定の速度で継続的に電力を供給する電源のため、ピーク需要や緊急事態の対応は想定されていない。日本の資源エネルギー庁はベースロード電源として、地熱・水力・原子力・石炭の4つを挙げている。
日本は地熱資源量において世界第3位を誇っている。さらに地熱発電後に出る熱水も利用でき、エネルギーの多段階活用においても注目されている。しかし渇水が問題視されている水力発電や、放射性廃棄物を生み出して事故のリスクも懸念される原子力発電、二酸化炭素排出量が多く環境に負荷をかける石炭火力発電など、ベースロード電源の課題点も多く存在する。
ミドル電源
ミドル電源は、発電コストがベースロード電源の次に安価で、電力需要の動向に応じて出力を調整できる電源である。ミドル電源として天然ガスとLPガスが挙げられている。
天然ガスは化石燃料のなかで最も温室効果ガスの排出量が少なく、ミドル電源の中心となるエネルギー源として位置付けられている。しかし、世界の天然ガス埋蔵量は残り約50年分ほどしか残っておらず、再生可能エネルギーへのシフトが求められている。
またLPガスも温室効果ガスの排出量が比較的少なく、クリーンなエネルギー源として利用されている。また貯蔵が容易で備蓄体制が整えられていることから、災害時などの緊急事態に「最後の砦」として活用できるエネルギー源だとして、日本政府はさらに供給体制の強靭化を進めている。
ピーク電源
ピーク電源とは、発電コストが高いもののミドル電源と同じく電力需要の動向に応じて出力を調整できる電源のことである。ピーク電源として、石油と揚水式水力が挙げられている。
石油は、国内需要は減少傾向にあるが一次エネルギー(*1)の4割程度を占めており、火力発電の燃料以外にもガソリンや灯油、軽油などの原料として重宝されている。後述するが日本は原油輸入の92%を中東に依存しており、国際情勢などで被るリスクは相対的に高くなっている。そのため中東以外の新たな輸入先の開発・確保を進め、安定供給に向けて動いている。
また揚水式水力は発電量の調整が容易で、同じくピーク電源として利用されている。昼間は水の位置エネルギーを利用して発電し、夜間は余剰電力を使って水の位置エネルギーを蓄えるという方法を取っており、蓄電を担っている。
(*1)加工されない状態で供給されるエネルギーで、石油・石炭・原子力(天然ウラン)・天然ガス・水力・地熱・太陽熱など
日本の電源構成
では具体的に、日本の電源構成はどのようになっているのだろうか?資源エネルギー庁によれば、2018年の日本における電源構成は、以下の通りとなっている。
石油 7%、石炭 32%、天然ガス 38%、原子力 6%、再エネ 17%
日本の電源構成、筆者作成
上記の表にあるように、これを石油 3%、石炭 26%、天然ガス 27%、原子力 22%、再エネ 22% へと変えていくのが現行目標だった。ところが、2050年のカーボンニュートラルを達成するためには、こうした目標では十分でないことが指摘され、再エネの主力電源化や原発の活用などが訴えられることになった。
この結果として生まれたのが、前述した「第6次エネルギー基本計画」の素案での石油 2%、石炭 19%、天然ガス 20%、原子力 22%、再エネ 36% という「野心的な見通し」だ。