気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は9日、地球温暖化に関する報告書を8年ぶりに公表して、地球温暖化の原因は人間の活動であると初めて断定した。
IPCCは、現在のまま地球温暖化が進めば、熱波や豪雨などの「極端現象」の頻度・強度が世界各地で増していく他、一部地域では人類が暮らせなくなることなどを警告している。国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏は、この厳しい状況について「人類への赤信号」だと述べる。
今回の報告書では、具体的にどのようなことが指摘・問題視されているのだろうか。
報告書のポイント
本報告書の大きな特徴は、地球温暖化の原因が人間の活動によるものと初めて断定した点だ。1990年に最初の報告書が公表されて以来、地球温暖化の原因を人間の活動とする表現は、徐々に強まってきたが、それがピークに達したというわけだ。
なぜ断定?
8年前に公表された第5次報告書では「温暖化の主な要因は、人間の影響の可能性が極めて高い」とされていたが、今回の報告書では「人間の影響が大気、海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断定表現が用いられている。
その理由について、IPCCは以下のポイントなどを挙げる。
- 産業革命以降に観測された急激な気温上昇が、過去2000年以上の間で例がないほどの水準であること
- 過去10万年の間で、最も地球が温暖であった頃の推定気温を超えていること
- 人間の活動と自然による影響の両者を考慮した試算にもとづく推定気温と、おおむね一致していること
1.5度以上、上昇したシナリオは?
また、産業革命以前と比較して平均気温が1.5度上昇した場合の危険性として、以下の事例を提示している。
- 過去50年に1度しか起こらなかった危険な熱波が、5年に1度起こる
- 今世紀中に、海面が1~3フィート(30~90cm)上昇する
- 過去1世紀に1度しか発生しなかった大洪水が、定期的に発生する
報告書によれば、この10年間の気温は過去12.5万年のなかで最も暑かった可能性が高く、世界の氷河は、過去2000年で類を見ないほど急速に溶けている。
また過去1世紀で海面は約8フィート(243cm)上昇しており、その上昇率は2006年以降で2倍になっている。海の生き物が被害を受けるほどの海水温上昇も、1980年代以降およそ2倍の頻度で発生している。