今月15日、反政府組織タリバンはアフガニスタンの首都カブールに侵攻して、事実上の権力掌握に至った。現在、米国や英国など各国は自国民やアフガニスタン人の協力者などを国外退避させており、日本も邦人や大使館などの現地スタッフを国外退避させるため、自衛隊機を派遣している。
一方、自国民以外のアフガニスタン人をどのように受け入れるかについて、各国の方針はまちまちだ。自国に協力した関係者以外にも、多くの難民が生まれると予想されており、欧米諸国や周辺国などが対応を迫られている。
日本を含めた世界各国は、アフガニスタン難民をどのように受け入れる方針なのだろうか?
米国
米国の難民政策は、近年大きく後退していた。アフガニスタン撤退が決まっていた2021年、年初から8月までに米国へ定住したアフガニスタン人はわずか485人だった。トランプ政権以降、米国は難民の受け入れを減らしており、1980年の20万人から1万人前後となっている。
ただし、アフガニスタン難民に関しては特別移民ビザ(SIV)と呼ばれるプログラムが存在している。これは、米国や有志連合に協力していた現地アフガニスタン人を対象としたプログラムであり、こうした人々はタリバンからの報復を受ける可能性が高いため、優先的な受け入れ対象となっている。
タリバンによる権力掌握前、米国政府はSIVによって約1万5,000人のアフガニスタン人を受け入れ、約1万8,000人の申請が手続き中だった。これまで、SIVを取得して約7万人のアフガニスタン人が米国に移住している。しかしながら、米国の協力者は30万人以上とも言われており、現在までに米国に移住したのは全体のごく僅かに過ぎない。
また、SIV申請者のうち5万人は未だアフガニスタンから脱出できていないため、ジョー・バイデン大統領は、他国に対して一時的な受け入れを要請している。これに対して、現時点でコソボとアルバニア、ウガンダなどは要請を承認して、難民の一時受け入れを決定している。
英国
英国は、今年中に5,000人のアフガニスタン難民を受け入れる計画を発表している。内務省によれば、すでに約3,300人のアフガニスタン難民を受け入れた。この計画では、女性・子供・宗教的マイノリティなどが優先的に保護される予定で、今後5年間で最大2万人のアフガニスタン難民を受け入れる計画だ。
本計画は、2014年から累計約2万人のシリア人が英国に再定住した第三国定住プログラムと類似した内容となっている。しかし、アフガニスタンの人口はシリアの約2倍であることから、シリア難民の受け入れ数と同数に留まることへの批判も出ている。
カナダ
カナダ政府は、2万人以上のアフガニスタン難民について、カナダに再定住させることを約束している。女性指導者・公務員・LGBTQ・人権擁護家・ジャーナリストなど、タリバンの標的になる可能性が高い人が優先される方針だ。カナダは2001年から今年にかけて、約2万3,000人のアフガニスタン難民を受け入れている。
またカナダでは、今回の難民対応が来月20日に迫る総選挙に影響を与える可能性も指摘されている。2015年の総選挙では、シリア難民の受け入れ要請が高まり、それに応えた自由党が議席の過半数を獲得した経緯がある。ただしその後、カナダでも移民反対の声が高まっており、今回の政策についても批判が高まる可能性もある。
EU諸国
欧州連合(EU)の外交政策責任者であるジョセップ・ボレル・フォンテレス氏は、加盟国との会談後に「欧州に向けた大規模な移民の動きは無いようにしたい」と述べた。