ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、国際社会においてロシアを非難する声が強まっている。
国連安全保障理事会(15ヶ国)は25日、ロシアのウクライナ侵攻を非難する決議案を採決した。常任理事国であるロシアの拒否権行使によって否決されたものの、11ヶ国が賛成し、国際社会におけるロシアの孤立が印象付けられた。
この採決では、ロシアの友好国である中国が反対ではなく棄権にとどまったことも注目された。今回の安保理決議案のみならず、2月から続くウクライナ危機について、中国政府は明確な立場を取らず、「外交の綱渡り」をしていると指摘される。
ロシアによるウクライナ侵攻の結果によっては、中国による台湾への武力行使に弾みがつくという憶測が流れるなど、今後の東アジアにおける安全保障の観点からも注目が集まっている。では実際に、中国政府は今回のウクライナ侵攻に対して、どのようなスタンスで臨んでいるのだろうか。そして、その対応の背景にはどのような理由や思惑があるのだろうか。
ウクライナ危機をめぐる中国政府の対応
中国政府は、ウクライナ危機の深刻化において明確な姿勢を示すことを避け、常にロシアとウクライナ両国に配慮する姿勢を見せてきた。ただし後述するように、この立場については、3月に入ってから変化も見られる。
中国の対応について、タイムラインに沿って見ていこう。
双方への配慮を見せる中国
まず、2月4日開幕の北京冬季五輪に合わせて開催された中露首脳会談では、会談後に北大西洋条約機構(NATO)の拡大に反対する共同声明を発表。NATOの東方拡大を懸念するロシアの立場について支持を示した一方で、ウクライナに言及することは避けた。
また状況が悪化した2月19日には、中国の王毅外相が、「すべての国の主権、独立、領土の一体性は尊重され、保護されるべきであり、ウクライナも例外ではない」と発言。NATOの東方拡大に改めて懸念を表明しながらも、全当事者が腰を据えて深い議論をおこない、ミンスク合意を履行するためのロードマップとタイムテーブルを作成すべきとして、ロシアの軍事侵攻にクギを刺した。
すべての当事者に「自制」
さらに王毅外相は2月22日、米国のアンソニー・ブリンケン国務長官との電話会談で、「中国はウクライナ情勢の推移を注意深く見守っている」と述べ、すべての当事者に「自制」を繰り返し求めたという。
加えて「いかなる国の安全保障上の正当な関心も尊重されるべき」で、「『安全保障の不可分性の原則』を実行することの重要性を認識し、対話と交渉を通じて状況を緩和し、相違点を解決するべき」と発言。ウクライナ問題に対する立場として、独立承認の支持という考えは示さなかった。
「侵略」と述べず
一方、ロシアによる攻撃開始後の24日には、中国外務省の華春瑩報道局長が、ロシアの行動について「侵略」と表現することを避けている。