⏩ コーディングや多言語に対応する ChatGPT に対して、Bard は学習データの時期に強み
⏩ 検索への統合でも、Google と Microsoft で違い
⏩ 広告モデルの確立やコストへの対処などは共通課題に
22日、Google は自社が手掛ける AIチャットボット(AIチャット)の Bard を一般公開した。まずは英国と米国でサービスを開始し、今後多くの国・言語に拡大予定だ。
Bard については、OpenAI が開発した ChatGPT のライバルと目されているが、ChatGPT は公開から2ヶ月で1億ユーザーに達するなど、同分野で先頭を走る存在となっている。AIチャットをめぐっては、検索ビジネスを脅かす存在とも言われており、OpenAI に深く関与する Microsoft のみならず、Google の動きにも注目が集まっている。
新たに公開された Bard は、先行する ChatGPT と何が違うのだろうか?
Bard とは何か?
Bardとは、Google社が開発したAIチャットボットのことだ。AIチャットボットとは、ユーザーのクエリ(問い合わせるキーワード・文章)に対して、人間の対話のように簡潔に答えを提示してくれるサービスだ。
Bard は、単純なクエリだけではなく、回答に際して多様な視点が必要となる複雑なクエリに対して、内容を要約して答えることができる。例えば「ピアノとギターのどちらが習得しやすいか、それぞれどれくらいの練習量が必要か」というクエリに対して、ピアノとギターが他方に比べて習得しやすいとされるそれぞれの理由を提示し、また中級者になるために必要な練習時間を回答するといった具合だ。
なお Bard のベースには、Google が開発した LaMDA(対話アプリケーション用言語モデル)と呼ばれる大規模言語モデル(LLM)が使われている。
公表のきっかけはChatGPTに関連する動き
当初、Bard は今秋に発表される予定であったが、計画よりも早い3月に公開された。その背景には、ChatGPT の拡大と競合である Microsoft の動きがある。
2022年11月に公開された ChatGPT の急速な拡大を受け、Google の経営陣は同年12月に「コードレッド」を宣言し、検索ビジネスを覆しかねない深刻な脅威が迫っていることを社内に示した。また今年1月には、Microsoft が ChatGPT を開発するOpenAI に対して巨額投資を行うと発表しており、その後 Microsoft 社の全製品に ChatGPT のような AIチャットの搭載も明らかになっている。
Google は、このような動きに対して危機感を抱いた投資家や従業員からの圧力を受け、2023年2月6日に Bard の存在を公表した。その際、数週間のうちに一般公開することも明らかにされたが、具体的な時期の目処は立たずにいた。実際、社内では Bard の発表は早すぎるという批判が上がり、また Bard のテストに時間をかけるよう指示が送られたと報道されている。
しかしここ最近、AIをめぐる競争はエスカレートしていた。Google は3月14日、大規模言語モデル PaLM の API 提供や、生成系AI を GoogleCloud のサービスに導入することを発表した。その同日には、OpenAI が新たな言語モデル GPT-4 を公開し、さらに2日後の3月16日には、Microsoft が Office 製品に生成系AIを導入した Microsoft 365 Copilot をリリースした。
このような動きを受けて、予定より早い一般公開に踏み切ったとみられる。
Bard と ChatGPT の違いは?
では、Bard とChatGPT は何が違っているのだろうか?大きくサービスの機能・特性、学習しているデータ、公開範囲、検索への活用という4つの観点に違いを見て取ることが出来る。