⏩ AIが生成した作品、著作権は保護される?
⏩ AIが既存作品を無断で学習、著作権侵害に当たる?
⏩ AIによる記事利用、盗作や剽窃にならない?
企業や個人が直面するリスク、著作権者が取れる対策とは
ジェネレーティブAI(生成系AI)が一定レベルの創造性を獲得し、分野によっては人による創作物と変わらないレベルで、テキストやイラストなどの作品を自動生成することが可能になりつつある。
ジェネレーティブAIとは機械学習の一種で、画像、テキスト、音楽、コードなどの既存のデータから、アルゴリズムを用いて新しいコンテンツを生成する技術あるいはサービスのことだ。3月21日にはMicrosoft創業者のビル・ゲイツ氏が、自身の人生で革新的だと感じた2つのテクノロジーの内の1つ(*1)と言及するなど、今、圧倒的に注目されている技術分野である。
しかし、その革新性の高さや普及スピードの速さからさまざまな課題やリスクを社会に突きつけていることも事実だ。中でも、AIが自動生成した創作物の著作権については、未だに明確な法的枠組みが整っておらず、大きな議論を呼んでいる。
現在注目されている主な論点は、大きく分けて
- AIが生成した作品は、そもそも著作権保護の対象となるのか?
- AIによる他者の著作物の利用は、著作権侵害に当たらないのか?
という2点だ。それぞれについて、以下で解説していこう。
(*1)もう1つの革新的な技術は、Windowsの前身的存在であるグラフィカルユーザーインターフェースだという。
著作権とは
各論点の解説に入る前に、まずは著作権の概念や効力について、改めて確認しておこう。
著作権とは、テキスト・音楽・映像・ソフトウェア・写真・絵画などの著作物を創作した者が、その著作物に対して享受する権利のことを指す。
「著作物」とは、人が思想または感情を創作的に表現したものであり、その著作物について著作権を持っている人(一般的にはその著作物を作った人)が「著作権者」だ。
著作権者は、自らが創作した著作物を利用・公表できる権利を有する。また、第三者が無断でその著作物を利用していれば、著作権侵害として損害賠償請求や差し止め命令などの救済措置を受けることが可能だ。
こうした著作権について、ジェネレーティブAIとの関係の中で問題となるのが、冒頭に挙げた2つの問題だ。ジェネレーティブAIの登場によって、コンピュータから人間の創作物と見分けのつかない情報が生成される状況になりつつあり、AIによる創作物の取り扱いについて、改めて議論や検討が始まっている。
1. AIが生成した作品の著作権
まず、そもそもAIによる創作物は著作権保護の対象となるのかという点から見ていこう。これは、AIが生成した作品は人間の創造性の結果ではないため、著作権の保護要件に該当しないのではないかという疑問だ。
人による創作物とAIによる創作物の境界について、内閣府の知財戦略推進事務局の検討によれば、人間の関与の程度によって次のように整理される。
権利が発生する場合
AIを用いた創作のうち、作者に権利が発生すると判断されるのは、創作行為の中で「創作的寄与」があったと見なされた場合だ。
「創作的寄与」とは、創作過程における「具体的な結果物を得るための」行為を指す。具体例としては、機械翻訳におけるポストエディット(訳出結果を修正する作業)や、作曲における多数の生成結果からの選択・修正など、人間が実際に手を動かして作品の創作に関与する行為が挙げられる。
つまり、人間の関与が「AIを道具とした創作」であると見なされれば、著作者としての権利が発生することになる(*2)。
(*2)ただし、ジェネレーティブAIの利用規約にも注意が必要だ。著作権が発生していたとしても、サービスによっては商用利用が禁じられたり、特定のクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを付けて公開することが義務付けられたりする場合がある。